いけずのいけす

すっきり整った暮らしを夢想するアラサーゆるゆるオフィスレディです。

冬のベランダを泳ぐ鯉

家の近所に、洗濯物を竿に通して干している家があった。

トップスは竿が両腕を貫く形で1本で、ボトムは片足に1本ずつ通して計2本の竿で干されていて、干す作業はハンガーを使うよりも大変そうだと思った。何かこだわりがあってそうしているのだろうか。真横になったボトムは、いくつも並んでいると鯉のぼりが連なって泳いでいるようで面白い。


こういう干し方をすると、竿に対し洗濯物が平行になるので、ずらり干されている物の形がよく分かる。一方ハンガーを使うと竿に対し洗濯物は垂直に並ぶので、竿を横から眺めても何が干されているのか判断がつかない。


「洗濯物のイラスト」を考えた時、頭に思い浮かぶのは「物干し竿(orロープ)が画面に水平にあり、そこにTシャツやスカートや靴下が下がっている図」ではなかろうか。そんなふうに干されているものの形がはっきり分かるということは、現実に即して考えれば、洗濯物は竿に通されている、もしくはロープに直接洗濯バサミで止められているのだろう。
そう思って「洗濯物 イラスト」とサーチしたところ、もちろん上記のような表現がなされたイラストもある一方で、多数を占めるのは「ハンガーを使っているが、洗濯物がこちらを向いている」というものだった(文字だけだとやや分かりづらいが、検索してもらえればすぐ分かると思う)。現実に干してもそうはならないのは言うまでも無い。何気ないイラストだが、その中には
・物干し竿に平行な視点
・ハンガーに平行な視点(物干し竿に対しては垂直な視点)
の2つがあり、それぞれの物の特性が最もよく表れる視点で見た物の姿を組み合わせた表現になっているのだ。


さて、古代エジプト絵画/壁画はその特徴的な描写方法が広く知られている。

 

例えば人間を描く時、顔は横向きだが目は正面、上半身は正面、下半身は横向きというように、異なる視点を組み合わせた描写がなされる。これは壁画が神に捧げられた物であるため、神々に正しく考えが伝わるように、部位ごとにその特徴を最もよく表す視点から事物を描いているのだという。


洗濯物のイラストも、特徴をよく表す視点を組み合わせているところは同じだ。3000年前も今も、3次元空間をいかに2次元表現に落とし込むかを考えたとき、辿り着く場所には共通性がある。古代エジプト人の壁画職人に現代の洗濯物風景を見せてみて、壁画ではどんな風に表現するかを聞いてみたい。