いけずのいけす

すっきり整った暮らしを夢想するアラサーゆるゆるオフィスレディです。

物の行く先と来し方

TVの調子が悪い。休止状態から電源を点けようとしたとき、時々画面が映らない。真っ暗なときもあれば、グレーで音声だけ流れるときもあるが、何にしても使えないことに変わりはない。裏側を見れば2007年製とあったので、そろそろ寿命ということか。


折しも春の引越しシーズンである。
夫に最近引越しした知り合いは居ないかと聞いてみたら、心当たりがあるというので連絡を取ってもらったところ、トントン拍子で話が進み、不要になったTVを貰えることになった。新しくやってきたTVは2012年製だったので、まだ5年は使えるだろう。


中古品市場は、メルカリなどの手軽なCtoC売買市場が登場したことで一気に身近なものになった。マスクやホケミ(※ホットケーキミックス)転売の温床となるなど闇市的側面があることは確かだが、それでもある誰かにとっては捨てるしかなかった不要品に、別の誰かに使われる道筋を用意できる仕組みは偉大なものだ。今回のTVのように、身近な知り合い同士で需給とタイミングが一致することはそう多くない。


メルカリの醍醐味は、中古品店の介在無しに物を介して売り手と買い手が直接繋がるところだと思っている。売り手は買い手を選べないので、この人には買ってほしくなかったと感じる買い手が居る一方で、この人に引き取ってもらえて良かったという人にも出会う。

先日、もう活動を休止したとあるブランドの服を売った際「ここの服以外着ないので、買えて良かった」というメッセージを貰った。私も大好きだったブランドの、大切に着てきた服である。手放すことは決めたが、可能なら大事にしてくれる人に渡ってもらいたいと思っていたので、買い手はまさに理想的な人で、もう未練無く安心して手放せた。こういうことがあるのでメルカリは面白い。
(それにしても、もうそのブランドの新規供給が無い以上、なんて難儀な生き方なんだと思う)

 

「メタモルフォーゼの縁側」という漫画があって、それは女子高生とおばあちゃまが共通の趣味をきっかけに友情を築いていく話なのだが、その中に女子高生が(明言はされないが、おそらくメルカリなどのフリマアプリで)中古の漫画執筆セットを買うシーンが出てくる。
セットの中には「古いものですけど、使えると思うので…使ってもらえれば嬉しいです」というようなメッセージが同封されていて、女子高生はこれで漫画を書き、ほんの少し新しい世界へと歩み出す。

漫画を書く原動力はもちろん別のところにあるにしろ、インターネットの向こう、顔も知らない、だが確かに存在する一個人である売り手からのちょっとしたメッセージにも、背中を押された気分になったことだろう。


なお、お役御免になった我が家のTVは、家にそもそもTVが無いから要らないならくれと言っていた私の同期社員に引き取られていき、それなりに使われているようだ。需要と供給は思いがけず近くにもあった。