いけずのいけす

すっきり整った暮らしを夢想するアラサーゆるゆるオフィスレディです。

夏の終わりのサラウンド

まだまだ終わる気配のない夏だが、夜は秋の虫の声が目立つようになってきた。

千葉で迎える初めての秋、何より驚いているのはその声の賑やかさである。


東京でももちろん虫の声は聞こえたが、「あのあたりから⚪︎⚪︎の音が聞こえている」と検討がつけられた。その気になれば虫取り網片手に鳴き声の主を特定することも出来ただろう(虫が嫌いなので死んでもやらないが)。路肩の植込みや街路樹の根元など、虫が潜んでいそうな場所は限られていたし、同時に聞こえるのはたいてい1種、多くても2・3種類だったからだ。


それに対して、団地のあいだの広い緑地を抜けて家へと向かう今の様子はどうだ。

高音もあれば低音もあり、短いリズムもあれば長いリズムもあり、時には同じタイミングで時には少しズレながら、何種もの何十もの音が重なり合って、自分を取り囲む空間全体から響いてくる。無数の演者が奏でる音が合わさって、豊かな厚みをもった音楽になり、歩く私を包み込む。それは今まで聞いていた虫の音というやつとは、全く次元の違うものだった。


東京が1方向から単一の音が聞こえるモノラルサウンドだとしたら、千葉はさながら5.1chサラウンドであり、あるいは一人の演奏に聞き入る東京に対して、千葉は大編成のオーケストラだと言える。良い悪いではなく、そのくらい違っているということだ。


言葉では同じ「秋の虫の声」と表現されるものであっても、実際の現象は場所によって大いに異なっている。当たり前に知っているつもりだったものでも、場所を変えることで遥かに奥行きのある世界だったと気づく場合がある。

未知の世界の平野は、遥か彼方にあるだけでなく、日常をほんの少し深掘りしたところにも広大に広がっているのだ。

 

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今週のお題「残暑を乗り切る」