いけずのいけす

すっきり整った暮らしを夢想するアラサーゆるゆるオフィスレディです。

この夏は東京でクリムトを見る

6月23日現在、東京でクリムトに関連した展覧会が2つ開催されている。1つは上野・東京都美術館の「クリムト展 ウィーンと日本1900」で、もう1つは六本木・国立新美術館の「ウィーン・モダン」だ。時折雨が降る不安定な天気の土曜日、2つの展示を回ってきたので、感想と両者の違いを記す。

 

クリムト展」はその名の通りクリムトを中心に、彼を取り巻く芸術家達の作品を展示している。クリムトというと、金箔や抽象的な装飾が印象的だが、そういう画風になる前、いわゆる伝統的な西洋絵画を書いていた時代がもちろん存在しており、その頃の絵も本展で見られる。当然ながら上手い。「ピカソって普通の絵は描けないのか?」とか思ってたら、14歳のときに描いた絵(《初聖体拝領》パブロ・ピカソ|MUSEY[ミュージー])を知ってしまった時の気持ちに似ている。

そんな普通の画家だったクリムトが、どのようにして絵画技法や、その背後にある思索を深めていったかを、時系列に沿って追った展示となっている。著名な作品「ユディト1」「女の三世代」や、ヴェートーヴェンの第九をモチーフにした壁画の実物大レプリカなど、クリムト好きには見逃せない展示内容だ。

 

一方「ウィーン・モダン」は展示範囲の幅が広い。啓蒙君主マリア・テレジアの話から始まり、ウィーンの市街地拡張、近代的な官庁建築の数々、個人の日常や内面への注目、合理性を求めたインテリアや服飾、伝統に捉われない芸術を志向する人々(クリムトはここに属している)の活動といった様々なテーマを扱い、新たな文化が数多く花開いた19世紀末ウィーンという時代はどのようにして生まれ、発展したのかを描き出す。

絵画、広告、模型、家具など、400点にも渡る展示物はかなりバラエティーに富んでおり、クリムトファンならずとも、様々な視点から楽しめる企画展となっている。

 

というわけで、純粋なクリムトファンなら「クリムト展」、それほどでもないなら「ウィーン・モダン」がおすすめ。ちなみに、クリムト展はその性質上、近寄らないとよく見えない小品も多いのだが、圧倒的に混んでいる。時間と会期には余裕を持って来訪したい。